2010年4月3日土曜日

リーバクト
分岐鎖アミノ酸
カロリー不足なので、たんぱくを分解してカロリーを得るときに、アミノ酸ができてしまう。
→分岐鎖アミノ酸により、効率よく、アミノ酸の発生を抑制できる?はず




No.2 「肝硬変合併症の治療でこんな点に注意しています」
肝臓NAVI > 肝疾患情報(肝臓内科医向け) > 専門医に聞く > 肝硬変合併症の治療でこんな点に注意しています

肝硬変の非代償期では腹水、肝性脳症、食道静脈瘤などの合併症が認められますが、これらの合併症の管理
が、肝硬変の更なる進行を抑え、肝不全への移行を予防するための鍵となります。日常診療のなかで、肝硬変
合併症をうまくコントロールしていくには、どのようなことに注意すれば良いのでしょうか。鳥取大学医学部機能
病態内科学分野教授の村脇義和先生に、ご自身の診療にもとづき、肝硬変の合併症管理のコツと肝癌への
対応についてお話いただいきました。

合併症のコントロールで肝硬変の進行抑制
肝硬変の病期を機能的に分類すると、肝臓の予備能力により症状があまり出ない「代償期」と、肝硬変が進み
黄疸、腹水、肝性脳症などの症状が出てくる「非代償期」に分けられます。つまり、非代償期は肝硬変のより
深刻な段階といえるわけですが、このような肝硬変において注意を払わなくてはならないのが、腹水、肝性脳症、
食道静脈瘤などの合併症です。
合併症は、肝硬変の進行を早めるきっかけになるだけでなく、直接的な死因にもなりうるため、日常診療に
おいては、これらの合併症をいかに適切にコントロールしていくかが重要になります。また、合併症はいつ
現れるかわからないので、まだ代償期にある患者さんに対しても、常に注意を払っておく必要があります。
ここでは、個々の合併症に対し、私たちが実際に行っている対策について紹介していきます。

腹水 -治療の主体は、減塩食と利尿薬、アルブミン補強-
腹水の早期発見のために、受診時の体重測定、定期的な超音波検査を行っています。検査で腹水が認められた
場合には、まず利尿剤で対応していますが、ループ利尿薬とスピロノラクトンの併用を行うことが多いです。通常
は入院加療で、減塩食とともに利尿剤投与を行うと、1~2週間程度で軽快します。しかし、利尿薬治療だけで
完治しない場合は、25%アルブミン輸液を点滴するが、最近はそれでも治癒しない難治性腹水の患者さんが
全体の10~20%程度と増えてきています。このような患者さんに対しては、腹水の穿刺排液とアルブミン点滴を
併用したparacentesisを行っています。具体的には腹水を2リットル排液した場合は、25%アルブミン輸液を50cc
点滴する治療を、3~4日間隔で行います。難治性腹水の場合、特発性細菌性腹膜炎を併発していることがある
ので、腹水の細菌培養を必ず行います。この場合、血液で用いるカルチャーボトルを使用するのがよいでしょう。
腹水患者さんでの食事の基本は減塩食ですが、低アルブミン血症を改善するために、へパンED(R)
リーバクト顆粒(R)など、アルブミンを増強できる補強剤(分岐鎖アミノ酸製剤)を併用することがあります。

肝性脳症 -治療の基本は「低蛋白食+分岐鎖アミノ酸製剤」-
次に肝性脳症を発見するための第一歩は、まず問診でわずかな神経精神症状も見逃さないことです。できれば、
患者さん本人のみでなく、付き添いの家族にも様子を聞くのがよいでしょう。診察では羽ばたき振戦など神経症状
の有無、検査では血中アンモニア値を調べます。
肝性脳症の管理はその程度により異なりますが、犬山分類のII度以上は、可能なかぎり入院のうえ、絶食と
ブドウ糖輸液を行います。また、特に便秘、消化管出血、肉類の食べ過ぎなどが認められる場合は、高圧浣腸で
大腸洗浄を行います。その後、分岐鎖アミノ酸を中心とした肝不全用特殊アミノ酸輸液を3~4時間かけてゆっくり
と点滴します。絶食期間は、輸液管理とし、経口での摂食が可能になったら肝不全用栄養剤を併用します。
食事で大切なのは、蛋白質摂取量を、体重1kg当たり1g/日程度に制限することです。つまり、体重60kgの人で
あれば、1日60g程度の蛋白摂取に抑えたいです。それと同時に、規則正しい便通を図るために、ラクツロース、
ラクチトールといった非吸収性合成二糖類も使用します。それでも治らない肝性脳症に対しては、保険適応外
ではありますが、硫酸ネオマイシン、カナマイシン(R) 、硫酸ポリミキシンBなどの非吸収性抗生剤を投与して、
アンモニア産生の原因となる腸内細菌を減数するという処置をとります。ただし、この治療は、できれば1週間
程度の短期間で終了したいです。

分岐鎖アミノ酸で窒素バランスを保った栄養改善
以上のような治療で改善が認められれば、退院の時期も近くなります。この時期に行うのは、栄養療法(食事
療法)の指導です。その際の基本は、「低蛋白食+経口肝不全用栄養剤(ヘパンED(R) 、アミノレバンEN(R))。
通常は、常用量の半分程度の経口肝不全用栄養剤(分岐鎖アミノ酸製剤)を、食事と食事の間に服用してもらい
ます。これらの製剤は、肝機能の低下した肝硬変の患者さんで不足しがちな、分岐鎖アミノ酸(バリン、ロイシン、
イソロイシン)を多く含んでいるため、食後のアンモニア上昇を抑え、肝性脳症の増悪を抑制するのに役立ちます。
退院後も、食事は総エネルギー量1500~1600kcal、蛋白摂取量50~60g程度に抑えたいので、栄養剤による
補強は必要です。ただし、栄養剤の間食を嫌がる患者さんには、分岐鎖アミノ酸の単剤であるリーバクト顆粒(R)
使用します。低蛋白食+リーバクト顆粒(R)の組み合わせは、合併症の有無に関わらず、肝硬変患者さん全般に
広く用いられる栄養療法です。
肝硬変で肝性脳症が生じるのは、肝機能の低下により、食事由来のアンモニアが処理できずに食後アンモニア
が上昇するからです。このため肝硬変患者さんでは、アンモニア源を減らすために低蛋白食が必要なのですが、
そのような場合でも、窒素バランスを維持するために、ある程度の蛋白質は必要となります。
肝硬変の患者さんで分岐鎖アミノ酸が不足しがちになるのは、肝機能の低下により糖質からのエネルギー供給
が低下しているため、代わりのエネルギー源として分岐鎖アミノ酸が使われてしまうためです。そして、その不足
を補ってくれるのが、分岐鎖アミノ酸を多く含む経口肝不全用栄養剤であり、分岐鎖アミノ酸単剤の
リーバクト顆粒(R)ということになります。このため、合併症の有無にかかわらず、非代償期に移行しようとする
肝硬変の患者さんや肝機能低下のみられる患者さんすべての栄養管理には、低蛋白食にこれらの製剤を併用
して、アンモニア値をコントロールしながら栄養改善を図ることが望ましく、さらに肝性脳症による循環動態変化の
改善や再発防止にも役立つことになります。

食道静脈瘤 -定期的内視鏡検査でRed Color Signに注意-
食道静脈瘤やうっ血性胃症の発見には、半年~1年に1回の、定期的な内視鏡検査が有効です。この際は、食道
静脈瘤の大きさもさることながら、静脈瘤の表面にRed Color (RC) Signがあるかどうかに注意を払う必要があり
ます。RCは細い血管が拡張している表れで、これをもつ人は出血しやすいと言われているためです。RCが強い
ときは、静脈瘤に硬化剤を注入する食道静脈瘤硬化療法や、それより簡便な食道静脈結紮(EVL)による予防的
治療を行う場合もあります。また日本ではあまり行われていませんが、海外ではβ遮断薬のプロプラノロール投与
もよく行われます。一方、出血が認められる食道静脈瘤に対しては、緊急EVLのなどの、積極的治療策がとられ
ることになります。食道静脈瘤治療のための薬物療法というものはとくにありませんが、胃・食道逆流がみられる
場合に、酸分泌抑制剤が投与されることはあります。
肝硬変において合併症が怖いのは、合併症を起こすたびに肝実質機能が少しずつ悪化していくためです。
それゆえに、腹水も肝性脳症も食道静脈瘤もできるだけ予防していきたいのですが、とくに食道静脈瘤の出血
は、肝臓への血流低下につながり、他の合併症の引き金にもなりかねないので、極力回避したいです。

肝癌 -早期発見のために2ヵ月に1度の腫瘍マーカー測定と3~4ヵ月ごとの超音波検査-
以上のような合併症に加え、肝硬変で注意を要するのは肝癌の発症です。そして肝癌で何より鍵を握るのは、
早期発見・早期治療であることはいうまでもありません。外来で早期発見のために行っているのは、2ヵ月に1回
程度の定期的な腫瘍マーカー(αフェトプロテインまたはPIVKA-II)の測定と、3~4ヵ月に1回の超音波検査です。
これらの検査で腫瘍が疑われた場合は、CTやMRIで精密検査するという方法で、およそ1cm前後の腫瘍から
発見することができます。
通常、肝細胞癌が2倍の大きさに成長するのにかかる時間(doubling time)は3~4ヵ月であるため、この頻度で
検査していれば、たとえ1cm大での腫瘍発見には失敗しても、次回の検査で、まだ早期治療の可能な2cm大の
段階で発見することができます。このようなスクリーニングは、一般の開業医さんでも十分行えるものなので、
ぜひ心がけて頂きたいと思います。
2cm以下の腫瘍に対する早期治療としては、外科的切除のほか、ラジオ波による焼灼治療が、最もよく用いられ
ています。ラジオ波焼灼法は、かつて行われていたエタノール局注より確実な治療法であり、マイクロ波焼灼法に
比べても焼灼範囲を正確に予測できるという特徴をもっています。また、2cm大以上の腫瘍に対しては、ラジオ波
焼灼法と肝動脈塞栓術(TAE)の併用が行われます。
B型肝炎の場合の頻度は不明ですが、C型肝炎による肝硬変の場合、肝癌の発症率は1年間に7%程度と
いわれます。しかし、少なくとも2cm以下の早期に腫瘍を発見すれば、上記のような内科的治療で、外科的
切除と同等の治療成果、予後コントロールが可能な時代になりました。

合併症を引き起こさないために -大切なのは「規則正しい生活」と「適切な食事」-
以上、肝硬変における合併症について述べてきましたが、このような合併症を引き起こさせないためには、どの
ようなことに注意すれば良いのでしょうか。
そのためにまず心がけるべきことは、「規則正しい生活」と「適切な食事」です。ゆったりとした生活をして、野菜、
蛋白質をバランスよく含んだ食事を適量取り、適度に体を動かすことで、肝機能を悪いながらも現状のまま維持
していくことが大切です。
最近では抗ウィルス療法による原因療法が登場し、「肝硬変も治る」時代になりました。その意味では、原因療法
も積極的に取り入れていきたいのですが、それにはまだ壁もあります。そのような中で重要なのは、栄養源の
代謝中心である肝臓にできるだけ負担をかけず、肝臓自体を健康に保つことです。そのために、リーバクト顆粒(R)
などを利用する意義は大きいのです。
肝硬変による死亡数は、かつての3万人から最近では1万人に激減しました。今や肝硬変は死に直結する疾患
ではないのですが、医師や患者さんの中には、「肝硬変は致命的な病気」という昔のイメージが、いまだに根強く
残っているようです。
合併症を起こす前の肝硬変患者さんは、開業医の先生のもとで診療を受けているケースが多いのです。また
合併症を発症して専門医に紹介したあとでも、退院後の管理は、開業医の先生が行われることが多いと
思います。先生方には「肝硬変、肝線維化は、原因療法をすれば治る疾患だ」ということを、念頭において治療に
当たっていただきたいです。そして、合併症を起こし不安を抱えている患者さんに対しては、「肝性脳症も腹水も
可逆性で必ず治る」のだということ、原因療法のできない現状においても、リーバクト顆粒(R)などを用いて上手に
コントロールをしてさえいれば、肝硬変をもちながらでも普通の生活をして長生きできるということを、患者さんに
十分に伝えて上げて欲しいと思います。

村脇 義和 氏
鳥取大学医学部 機能病態内科学分野 教授
昭和50年鳥取大学医学部卒業
昭和56年鳥取大学医学部第二内科助手
昭和63年Erlangen大学第一内科で研修
平成元年鳥取大学医学部第二内科講師
平成13年鳥取大学医学部機能病態内科学(第二内科)教授

0 件のコメント: