2010年4月7日水曜日

非定型肺炎:成人
特徴
基礎疾患のない、60歳未満の、痰、胸部所見が少ない患者
咳がひどい

→非定形肺炎の可能性高い。

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成人でも非定型肺炎の重要な原因菌
としてマイコプラズマ,クラミジアが挙げら
れる。そして成人でも小児でも一番問題
となるのが診断,いかに簡便で迅速な方
法で検出するかということである。
迅速診断キットとして,マイコプラズマに
ついては「イムノカード」が,クラミジアに
ついては「ヒタザイム‐ELISA法」が導入
されているが,疑陽性の可能性を考慮す
る必要がある。
そこで我々は,クラミジアに対して新規
の診断法であるAntiLab-EIA法を検討中
であり,感度97.1%,特異度100%と今後
に期待している。
臨床的な診断法として,CT所見はマイ
コプラズマ肺炎の典型例を拾い上げるの
には有用だが,小児には被曝の問題があ
り,実施は困難である。また,クラミジアに
関してはエビデンスがない。
2000年公表の「成人市中肺炎診療の基
本的考え方」では抗菌薬の選択に際して,
臨床症状・症候6項目,検査成績3項目の
9項目によって,非定型肺炎と細菌性肺炎
の鑑別を試みており,これはわが国のGL
の特徴の1つである。
その後,3つの前向き研究で
集積された1,880例の肺炎症例
では,マイコプラズマと細菌性の
鑑別においては,この6項目は
非常に有効であると結論づけら
れた(表3)。
マイコプラズマとクラミジアの
大きな違いは,マイコプラズマで
は劇症化する場合があるもの
の,クラミジアでは劇症化するのは肺炎球
菌との混合感染の場合だけで,単独感染
では存在しない。
百日咳・
急性細気管支炎:小児
岡田賢司氏
(国立病院機構福岡病院小児科)
百日咳で一番問題となるのは診断であ
る。臨床症状として14日以上の咳に加え,
発作性の咳込み,吸気性笛声,咳込み後
の嘔吐の1つ以上を伴うこと,また発症か
ら4週間以内では培養とPCRによる診断,
4週間以降では血清診断を実施すること
が世界的にコンセンサスが得られている
(表4)。
血清診断では,定まった診断基準はな
い。ジフテリア・破傷風・百日咳3種混合
(DTP)ワクチン未接種児なら,凝集素価
の上昇を確認するだけでよいのだが,
DTPワクチン接種児,あるいは不明の
場合では,単血清では凝集素価320倍
以上(10歳未満)の上昇で判定している。
百日咳毒素に対する抗体も診断に用い
られている。DTPワクチン未接種児では
10EU/mL以上が陽性,DTPワクチン接種
児または不明児では,おおよそ単血清で
100 EU/mL以上あると診断ができる。
今日,年長児,成人の百日咳が増えて
きた原因の1つに,かつてDTPワクチンを
接種した小児が,百日咳の流行がなくな
り感染の機会が減ったことから,抗体価
が下がってきたことが考えられる。
欧米では,そのような小児を対象に3種
混合ワクチンの導入を始めている。フラン
スは1998年から,11~13歳児にDTPワク
チンと不活化ポリオワクチンを混合したよ
うなもの,あるいは成人用として調製され
たTdaP(百日咳ワクチンとジフテリアの抗
原量を減らした3種混合ワクチン)に不活
化ポリオワクチンを混ぜたも
のの接種が始まっている。
米国でも2 0 0 6 年から,
TdaP接種が年長児(11~18
歳)を対象に始まっている。
日本でも11~12歳児にDTP
あるいはTdaPワクチンを実
施する必要性が出てきたと
考える。
急性細気管支炎の原因
はRSウイルスが半分以上を
占めている。季節的には冬
から春にかけて乳児に多
い。RSウイルス感染が反復
性喘鳴の要因となることが明らかになっ
ている。
百日咳・
急性細気管支炎:成人
石田直氏
(倉敷中央病院呼吸器内科)
近年,百日咳菌は成人の急性~遷延性
咳嗽の主要な原因菌として注目されてい
る。遷延する感染後咳嗽を診た時は,本
症を疑う必要がある。
米国では以前から注目を集めており,
American College of Chest Physicians
(ACCP)の咳のガイドラインでは,急性咳
嗽のcommonな原因として百日咳が挙げ
られている。若年の成人,幼児の両親か
ら小児に感染するので,このサイクルを断
ち切らなければならない。欧米では成人
のワクチン再接種が真剣に討議されてい
るところである。
WHOの百日咳診断基準では,3週間以
上の咳嗽発作に加えて,百日咳菌の分離,
抗体価の有意な上昇,および百日咳患者
との家庭内接触のうち1つ以上を認めるも
のとされている。
抗体検査の問題点は,抗体検査が十分
行われていないことや,シングル血清での
基準がないことである。
ACCPのGLによると,治療の第1選択薬
は14員環,15員環のマクロライド系薬であ
る。カタル期の使用において有効とされて
いる。痙咳期に投与しても,症状の軽快
は見られないが,周囲への拡散防止には
有効である。
当施設で,3週間以上持続する咳嗽を
主訴とし,レントゲン写真上で異
常を認めなかった成人130例で検討
したところ,その原因(疑いを含
む)として感冒後/感染後咳嗽,咳
喘息が多かった(表5)。
また,百日咳は遷延性咳嗽,慢性
咳嗽の6.9%(9例)に関与しており,
特に遷延性咳嗽(3~8週持続)に限
ると,8.2%に関与していた。なお,
百日咳と確定した症例の中には,70歳代,
80歳代の症例も見られた。
RSウイルスやヒトメタニューモウイルス等の
小児で細気管支炎を惹起する病原体の成人
での関与については不明な状況である。
全年齢 0~1歳 2~5歳 6歳~
n=290
(中村明:日児誌 107:1067,2003 一部改変)
細菌性
ウイルス性
マイコプラズマ性
原因不明
図2 小児市中肺炎の年齢別原因微生物
60歳未満
基礎疾患なし or 軽微
頑固な咳
胸部聴診所見乏しい
痰がない or 原因菌不明
末梢白血球数1万未満
0.13332
0.18857
0.19338
0.26164
0.19294
0.14175
5.10
7.54
7.82
10.19
8.27
6.26
説明変数 偏回帰係数 t 値 p 値
<0.0001
<0.0001
<0.0001
<0.0001
<0.0001
<0.0001
(Ishida T,Miyashita N & Nakahama C. Respirology 2007)

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