3)右室梗塞の患者 〔血圧低下によりショックを起こすことがある。〕 | 右室梗塞は右心不全の症状を示すが、左房圧、肺動脈楔入圧の上昇はあまり認められず肺うっ血像を示さないため、本剤投与により心拍出量が低下し、心原性ショックを引き起こす可能性がある。 |
【右室梗塞(right ventricular infarction)について】 冠動脈の閉塞により、左室ではなく、右室側の心筋が壊死すること。 下壁閉塞のある症例のうち、約1/3に合併すると言われている。 <症状> 頸静脈怒張,Kussmaul徴候,四肢冷感,血圧低下などの右心不全所見。 *kussmaul徴候というのは怒張した頸静脈が深吸気により更に増強することで、正常例では吸気時に胸腔内圧が低下するために静脈圧が低下するが,右室梗塞例では右室拡張不全による右室流入障害のために静脈圧が上昇してしまうため、出現する。 胸部X線写真:肺鬱血はないか,あっても軽いことが特徴。 <診断> 心エコーにて右室の壁運動低下、または右室拡大がみられる ・右側胸部誘導心電図にてV3r,V4rで1mm以上のST上昇、または異常Q波を認める ・RAP≧10mmHg ・RAP≧PCWP
<合併症> 房室ブロック (右冠状動脈閉塞による房室結節への血流不全) 右室だけの梗塞があっても、心機能への影響は少ない。(およそ5%くらいの低下) しかし、術後管理する上で、 「どうもCVPが高めじゃないと(ボリュームがないと)血圧が維持できないなあ」 なんて時は右室梗塞を疑う。 <禁忌> 右室梗塞時はそれ自体の収縮力が低下しているので、ある程度「張った状態」(=前負荷が高い状態)でなければ心拍出量を維持できない。そのため、「ニトロール」や「ミリスロール(ミオコール)」(=主に静脈を拡張することで『前負荷』を減少させ、血圧を低下させる)、また利尿剤などの使用は前負荷を軽減させ、心拍出量の低下につながり、ショック状態を引き起こすことにつながる可能性があるため、禁忌となっている。
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