2009年7月5日日曜日
眼瞼の外傷 眼瞼を縫合してもいいのか?
1)メルクマニュアル
2)解剖
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1>眼の鈍的外傷は,眼瞼から眼窩の範囲に損傷が及ぶ。
眼瞼: 眼瞼の挫傷(眼瞼皮下出血)には角膜損傷が併発することがあり,見過ごすべきではないが,眼瞼の挫傷は,臨床的にというよりむしろ審美上の観点から問題である。
合併症のない挫傷は,受傷後24〜48時間氷嚢で冷やして腫脹を防いだ後,温湿布で血腫の吸収を促す。
眼瞼縁や瞼板に及んでいない軽度の眼瞼裂創は,6-0または7-0のナイロン糸(小児なら,腸吸収糸)で縫合する。
眼瞼縁の裂創は,眼科医が修復すれば,正確に並置されて,瞼縁に切痕が残ることを避けることができる。
下眼瞼内側部の裂創(涙小管まで及んでいる可能性がある),貫通性裂創,および眼窩脂肪や瞼板が露出する裂創などの重度の眼瞼裂創も,眼科医が修復すべきものである。
眼球: 外傷は,結膜,前房,および硝子体の出血,網膜の出血または剥離,虹彩の裂創,白内障,水晶体偏位,緑内障,ならびに眼球破裂を引き起こしうる。眼瞼の大きな浮腫または裂創は,評価が困難な場合がある。それでも,直ちに外科治療が必要な場合もあるため,内向きに圧力を加えないように注意して眼瞼を開き,できるだけ完全な検査を行う。少なくとも,視力,瞳孔反射,外眼運動,前房深度または出血,赤色反射の有無に注目する。鎮痛薬または抗不安薬を用いると,検査が容易になる場合がある。開瞼器または眼瞼固定器を慎重に用いれば,眼瞼を開くことが可能になる。眼科医による診察の前に実施可能な緊急治療には,1%シクロペントレート1滴と2.5%フェニレフリン1滴による散瞳,保護眼帯の装着(眼の外傷: 治療を参照 ),および眼内異物について前述した局所性および全身性抗菌薬による感染症対策がある。眼球に軟膏が侵入することは望ましくないため,眼球に裂創がある場合,局所性抗生物質の投与方法は点眼に限るべきである。開放創の真菌感染は危険であるため,手術で閉創するまで,コルチコステロイドは禁忌である。ごくまれに,片側の眼球の裂創後,対側の無傷の眼球に炎症が起き(交感性眼炎―ぶどう膜炎: 交感性眼炎を参照 ),治療しないと失明に至ることがある。この機序は自己免疫反応であり,コルチコステロイド点眼により予防可能である。
前房出血: この傷害には,眼科医が直ちに対応する必要がある。再出血,緑内障,角膜血痕が続発することがあり,そのいずれもが失明に至る可能性がある。前房出血が視界を妨げるほどに大きい場合を除き,症状は随伴する傷害によるものである。典型的には,直接視診で前房に血液の層もしくは凝結塊,またはその両方が認められる。血液層は,前房下部に半月状の層として認められる。それほど重篤ではない微小前房出血は,直接視診では前房の濁りとして検出され,細隙灯顕微鏡検査では浮遊赤血球として検出される。
患者を床上安静として頭部を30度挙上し,さらなる損傷から眼を守るために眼帯を装着する(眼の外傷: 角膜上皮剥離と角膜の異物を参照 に既述の通り)。 再出血のリスクが高い患者(例,大量の前房出血の患者,出血性素因を有する患者,抗凝固薬服用患者,鎌状赤血球症患者),眼内圧(IOP)の管理が困難な患者,指示を守らない患者は,入院させる場合がある。経口および局所NSAIDは,再出血を促すことがあるため禁忌である。眼内圧は,急性に上昇することも(鎌状赤血球症または鎌状赤血球体質の患者では通常,数時間以内),数カ月後,数年後に上昇することもある。したがって,数日間は眼内圧を毎日モニタリングし,その後数週間および,数カ月間は定期的に,また症状が現れた場合(例,眼痛,視力低下,急性閉塞隅角緑内障に似た悪心)にも測定する。眼内圧が上昇した場合,0.5%チモロール1日2回,0.2%もしくは0.15%ブリモニジン1日2回,またはその両方を投与する。治療に対する反応は眼圧により判定し,眼圧がコントロールされるか,またはかなりの眼圧低下率が得られるまで,1〜2時間毎にチェックし,その後は通常1日1〜2回測定する。散瞳薬(例,1%アトロピンを1日3回,5日間)および局所コルチコステロイド(例,1%酢酸プレドニゾロンを1日4〜8回,2〜3週間)を投与することが多い。アミノカプロン酸50〜100mg/kgを4時間毎(30g/日を超えないこと),5日間経口投与すると,再発性出血が減少する場合もある。こうした症例において,眼科専門医でない者は縮瞳薬や散瞳薬を投与してはならない。続発性緑内障を伴う再発性出血では,まれに外科的な血液除去が必要となる。
眼窩吹き抜け骨折 : 吹き抜け骨折は,眼窩内容物が鈍的外傷により眼窩壁の最も弱い部分,通常は眼窩床から圧出されて起きる。眼窩内側および上壁も骨折することがある。
症状には,複視,眼球陥入,眼球の下方偏位,頬および上口唇のしびれ(眼窩下神経損傷による),皮下気腫などがある。鼻出血,眼瞼浮腫,斑状出血が起きることもある。診断は,CTを実施するのが最善である。複視または許容できない眼球陥入が2週間以上続いた場合,外科的修復が適応となる。
外傷後の虹彩毛様体炎 (外傷性前部ぶどう膜炎;外傷性虹彩炎)
外傷後虹彩毛様体炎は,ぶどう膜および虹彩の炎症性反応であり,典型的には眼の鈍的外傷の受傷後3日以内に発症する。
外傷後前部ぶどう膜炎の症状には,流涙,眼の拍動性疼痛および充血,羞明,視野のかすみなどがある。診断は,既往歴,症状,ならびに典型的には前房の発赤(炎症性滲出液により房水中の蛋白質濃度が上昇するため)や白血球を示す細隙灯顕微鏡検査に基づく。治療には,毛様体筋麻酔薬(例,0.25%スコポラミン1滴を1日3回,1%シクロペントレート1日3回,または5%ホマトロピン1日3回)を用いる。症状の持続時間を短縮するため,局所コルチコステロイド(例,1%酢酸プレドニゾロンを1日4〜8回)がしばしば用いられる。
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